最初に「どの店舗を対象にするか」を決める
「ニューヨークの飲食店を調べたい」という依頼にも、未確定の条件があります。行政区なのか都市圏なのか。カフェやバーも含むのか。チェーン店は店舗ごとに数えるのか。一時休業中の店舗を残すのか。
Google Mapsの検索結果は、条件に応じて表示された候補です。一度で取り出せる完全な事業者名簿ではありません。リストの境界は、検索条件と採用基準で決まります。
- 地域:国、都市、郵便番号、行政区、または明確な範囲
- 分類:採用する業種、現地語の同義語、除外する近接業種
- 検索語:サービス名、商品名、店舗を探すときの表現
営業状態、評価の下限、レビュー数、Webサイト必須などの条件も確認します。対象を厳しく絞れば、候補数が減ることを前提にします。
項目は用途別に設計する
識別には名称・地点ID・出典URL、地域分析には住所や座標、企業の確認には公開サイトや代表電話、初期の比較には評価・レビュー数・営業状態が候補になります。すべての項目を必須にする必要はありません。
検索語、検索地域、取得日時も残します。これらは店舗自体の属性ではありませんが、何をどう探したかを再確認するために必要です。ページにない値を、収集だけで確実に補えるわけではありません。
地域を分けても「全店舗」にはなりません
検索する位置や語を変えると、見つかる店舗も変わります。地域を重なりのある小範囲に分け、業種の同義語を組み合わせ、結果を重複処理する方法を検討できます。
ただし、候補が増えても網羅性が証明されたわけではありません。納品説明は「合意した地域・検索語・取得日時の条件で見つかった店舗」とします。市場の総店舗数を推計したい場合は、別の業界名簿や公的登録情報との照合も必要です。
重複は店舗単位で確認
同じ店舗が複数の検索語や隣接地域の検索で見つかることがあります。まず地点IDや安定した出典URLを使い、次に名称・住所などを照合します。
同一ブランドでも住所が異なる店舗は、原則として別に残します。共有する代表電話やドメインが同じという理由だけで、別店舗を一つにまとめません。同じ住所の複数ブランドや移転情報など、規則だけで決めにくいケースは確認対象にします。
評価、レビュー数、営業状態は変化するため、取得日時と一緒に保存します。次回の検索で見つからなかったことだけでは、閉店とは判断できません。
実例:メルボルンのカフェ関連店舗50件
ここからは、公開JSONサンプルの全50件を使った確認です。検索語は coffee shop、検索地域は Melbourne, Australia、取得日時は 2026-08-24 07:39:13 UTC。少数のプレビュー行だけの集計でも、現在の市場調査でもありません。
1. 件数・識別子・空欄を確認
| 確認項目 | 保存ファイルの結果 | 解釈 |
|---|---|---|
| レコード数 | 50件 | ファイルの規模。都市の店舗総数ではありません |
異なる place_id |
50個 | 地点IDによるファイル内の重複はありません |
| Webサイト欄が非空 | 38 / 50、76% | 12件が空欄。リンクの有効性とは別です |
| 名称・住所が非空 | 各50 / 50 | 項目が揃っていること。全件の照合済みを意味しません |
| 出典URL・取得日時が非空 | 各50 / 50 | 照合と時点確認の手掛かりが保存されています |
この50件だけでは、検索結果全体の重複率を逆算することはできません。ファイル内で地点IDが重複していないことと、検索全体で重複がどれだけあったかは別の確認です。
「Webサイト必須」で絞ると、候補は38件になります。リンク先の帰属、取扱内容、現在の営業状況などを確認する前に、38件すべてを適格な営業先とは呼べません。充足率の分母は全50件です。空欄を除外してから100%とするのは、元の欠損を隠してしまいます。
2. 検索語と分類名を区別
主要分類は Coffee shop が41件、Cafe が7件、Espresso bar が1件、Coffee roastery が1件です。
主要分類が厳密に Coffee shop のものだけ採用すれば41件です。近い営業形態も認めるなら、残りの分類を含めるか先に決めます。これは採用基準の問題であり、残りの店舗が無関係だと確認されたわけではありません。
3. 地域表記をそのまま集計しない
city には28種類の値があり、Lilydale、Ringwood、Claytonなどが含まれます。検索地域にMelbourneと指定したからといって、すべての city をMelbourneに置き換えてはいけません。
行政区、郵便番号、半径で対象を限定するなら、住所または別途取得した座標で照合します。このファイルに座標はなく、指定範囲内の割合はまだ計算できません。
region は49件が Victoria、1件が VIC です。現地の地域表記を確認して対応付けたうえで、標準化した列を追加し、元の値も残せます。文字列だけで分けると、同じ州を二つの地域として数えてしまいます。
4. 未確認事項を明記
status は全件 open ですが、保存時の状態です。今日も営業していると保証するものではありません。今回の集計では店舗ページやWebサイトを全件開き直していないため、出典へのアクセス成功率、Webサイトの稼働率、対象地域への一致率は未確認です。
公開ファイルには電話、メールアドレス、担当者、レビュー本文を含めていません。電話の充足率や口コミの不満テーマを、この50件から計算することはできません。未収録の項目を「プラットフォームにもない」と説明しないことも重要です。
納品の確認では、五つの数字を分ける
収集直後の件数、重複処理後の件数、必須項目の充足率、出典を照合できた割合、地域・分類に一致した割合を別々に確認します。それぞれの分母と、確認した範囲を明記します。
地点のある店舗・施設の候補整理には適していますが、公的な事業者登録情報の代わりではありません。実店舗を持たない企業の調査には、業界名簿など別の出典を検討します。
依頼時は、地域、業種と検索語、店舗の数え方、必須項目、希望件数と網羅性の期待、納品・更新方法をお知らせください。海外顧客リストのサービスで納品内容を、サンプルページでCSV・Excel形式を確認できます。
